私はカンボジアの送り出し機関(技能実習生への日本語トレーニングや手続きを行う会社)で日本語の先生をしています。ここで他の国より大きく問題になるのが、母国語(カンボジア語ではなく正式にはクメール語)で満足に読み書きできない人がいまだ多くいることです。
この理由は、1970年から1993年かけて、ポル・ポト率いるクメールルージュにより自国民の大虐殺が行われた内戦の影響がいまだに残っていると言えます。原始共産制をかかげる彼らは富裕層だけでなく、僧侶や医者、学者、教師といった知識層をも処刑し、後には、字が読める、時計が読めるといった理由で殺害されることもあったそうです。このあたりのことは記録も少ないのですが、書籍や映画などでも知ることができます。
興味のある方におすすめなのがNetflixオリジナル作品
「最初に父が殺された 原題(First They Killed My Father)」(監督:アンジェリーナ・ジョリー)です。残酷な描写もありますがカンボジアの美しい景色と家族愛、クメールルージュの狂気が見事に描かれていると思います。
約30年前にそんな悲惨なことがあったとは思えないくらい、今のカンボジア(特に首都プノンペン)の経済発展は目指しましく、日本の地方よりよっぽど都会です。ただ街中に物乞いの子供たちがいるのが普通でもあり貧富の差が大きいのも事実です。また政府が経済復興に注力したのに対し、教育の復興は大きく取り残されました。地方農村の子たちは、親の仕事を手伝うため、小学校や中学校で勉強をやめてしまう子も多いです。またその小学校も、1日の勉強の時間は午前・午後のどちらかだけで、日本の子供たちの半分しか時間がありません。まして質に関しては、、、、。
という経緯から日本で働きたいと、申込みに来る若い子たちのなかにも、クメール語での読み書きが満足にできない子も多いです。
そういう子たちにこそチャンスを、とも思うのですが、では一体どうやって日本語を勉強していくのか、、、これは頭の痛い問題です。ノートをとることもできないんですから、、、
また日本語を勉強した外国人を見ていて思うのが、大切なのは「日本語が上手かどうか」ではなく、「日本語でなにをするか・なにができるのか」なのですが、それは「自分の言語でどれだけ思考してきたか、知識があるかによる」、と思っています。カンボジア人で日本語能力試験のN3まではとれても、N2、N1になかなか合格しないのは、問題に出されているテーマについて、(脳科学や自然科学など)背景知識が全くないことも影響していると思います。(N2の読解の授業は途中から小学校の理科の授業をしている気分になります。東西南北の概念からスタートです)
技能実習生として日本へ行くには、実は日本語のテストは在留資格の要件に含まれていません。
あいさつ程度しか日本語を知らなくても、日本で働きはじめることはできるのです。
ですが入国後半年から1年以内に、「技能検定 基礎級」という試験に合格しなければ翌年も日本にいることはできません。日本語での選択式の問題で、中国やベトナムから来た実習生で不合格になるという話はあまりききませんが、カンボジア人の場合は合格しないこともあります。(このあたりもカンボジア人実習生が失踪率1番なことと関係がある気がします、、、)
クメール語での読み書きができない人は勉強についていけず、日本に行ってからも日本語力の伸びしろは低いでしょう。まじめで家族思いだったからこそ、これまで勉強のチャンスを逃してしまった子もいるかと思うとやりきれません。
カンボジアの義務教育の体制が改善されること、また受け入れる日本側の会社の人が、そういった背景まで理解した上でカンボジア人の若者を受け入れてくれることが今後の課題になります。
長文読んでいただきありがとうございました。母語と第二言語習得の関係については今後も継続して投稿していきたいと思います。


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