カンボジアの首都プノンペンには日本語の蔵書も数多く取り揃えた図書館があります。
王立プノンペン大学の敷地内にあるカンボジア日本人材開発センター(CJCC)です。
そこの小説コーナーでたまたま手に取った本書は、もっと早く読んでおきたかったと思う良本でした。
タイトルから内戦をおこした悪名高きポル・ポトが主人公かと思われましたが、主人公は日本人男性、職業は株ディーラー。若くして成功した彼は31歳、仕事へのやる気も失ったいたあるとき、彼を株の道へ誘った大学時代の友人が内戦後のカンボジアで行方不明になったと聞き、、、
そこから主人公が株の世界に入ることになった「過去」と、友人探しのためカンボジアへやってきた「今」が交互に展開されます。タイトルの「掌」は株用語の「神の見えざる掌」からでしょうが、
株について知識なしの私にははじめての用語も多く、全部は理解できませんでした。ですが「過去」部分と「今」部分は短い文章で切り替わるため、読み進められます。
特に「今」部分は、内戦終結直後なので現在より30年は前のはずですが、そこに描かれている町の様子やカンボジア人についての描写は、現在プノンペンに住んでいる私が、漠然と感じている感想を見事に言葉に表してくれていました。登場するカンボジア人は、自分のアピールがうまく、金もうけに貪欲なのに、詰めが甘く、なぜか憎めない、、、。彼らと生活したことがある人なら「あーわかるわかる」となるのではないでしょうか。
その一方で終盤に登場するポル・ポト(と思わしき人物)は全く別の人種です。
主人公とこの人物の短い時間の対談はまるで禅問答のように、つかみどころがなく、結論もありません。内戦の話を聞くたびに「なぜ?」という疑問しかわかないのですが、それもこのような人物が率いたからなのか、、とフィクションなのにドキュメンタリーを見た気持ちになります。
カンボジアにゆかりのある方はより感慨深く、
そうでなかった方も、これを機に興味をもっていただけるかもしれません。
ぜひ手にとっていただければと思います!


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